第33回 海外視察

2025.03.19コラム

 三寒四温を繰り返しながら、徐々に春めいてくる時期ですが、今年は雨や寒い時期が長く感じられます。ジャガイモを彼岸までに植えなければと思いながら、雨が続き、なかなか植えかねています。墓掃除や庭の掃除も遅くなっており、少々焦っています。とはいえ、3月は私の誕生月。受験の失敗、親からの自立といった経験もありましたが、総じていい思い出がたくさんあり、甘酸っぱい気持ちになる、好きな月です。

 先日、ある人が私を訪ねてこられました。その方が、1月に会社の研修でニューオーリンズに行かれた際通訳をしていただいた方が、以前私が同市を訪れたときの通訳をしていただいた方だったそうで、よろしく言っていたと伝えてほしいということで、わざわざ来られたものでした。

 私は記憶が定かではありませんでしたが、その方は、私の行った視察が相対的に良かったということで記憶に残っていたのではないかと思います。海外視察をする際には、事前に記者会見をするのですが、必ず、出張経費はいくらかかるのか質問されます。海外視察と言っているが、実態は税金で観光旅行をするのではないかと疑っているからなのでしょう。

 松江市は中国の吉林、銀川、杭州、韓国の晋州と友好都市締結、ニューオーリンズと姉妹都市締結、アイルランドと小泉八雲を介した文化交流、台北、インドのケララ州と経済交流を行っています。これらは行政同士が交流を深め、民間交流、観光交流、経済交流につなげていくことを目的にしています。一方的になったり、低調になったりしないよう、まずは行政同士の定期的な相互訪問などの努力が大事です。

 私は、こうしたこと以外の目的にも、海外出張を活用しました。行政は様々な課題に対処するため、他の自治体のやり方を調査し参考にするということを行っています。しかし、国内の自治体のやり方は似たものが多く、この点、外国の自治体は日本のやり方と異なるところもあり、大変刺激的なのです。もっとも、考え方や歴史も違いますので、そっくりそのままというわけにはいきませんが・・・。

 宿泊税は、フランスとアメリカを参考にしました。観光協会の行政からの独立性、主体性がなければ、宿泊税をそこにあてても無駄になってしまう。協会が主体的に作った実施計画を行政との契約という形でオーソライズし、宿泊税をつけるということが大前提だということを学びました。観光は行政が行うものだという観光業界のこれまでの認識を払拭してもらわなければいけないということです。

 道路、河川、公園といった公共施設の管理・活用を民間団体にゆだねるという考え方は、フランスのボルドーで学びました。日本では公共施設は不特定多数の人が利用するもの、特定の人が独占してはいけないという考え方が常識です。しかし、そのことが公共施設の活用を妨げているのが実情です。たとえば、公園は一定の基準で設置が義務付けされています。これはたくさんの人に利用してもらおうという目的のためです。しかし、実態は、利用する人が少なく、閑古鳥が鳴いています。これは、設置した行政にどうしたらたくさんの人に利用してもらえるかという知恵がないのです。というよりも、利用してもらわなくても困らないからです。多額の設置費用がかかっているというのにです。これでは宝の持ち腐れ、管理費用だけがかかります。また、公園をもっとよくしていこうというインセンティブも働きません。

 ボルドーでは河川敷を特定の団体に有償で貸し付け、団体は活用募集をし、年間の活用計画を立てるのです。団体は利用者から料金をもらい、ここから管理費用を捻出し、残りが収益となるのです。これにより、年間を通じて河川敷が整備され利用されていくことになるのです。日本では道路管理者、河川管理者、公園管理者という概念があり、市長からは独立し、国の管理下に入るという仕組みがあり、なかなか市長の権限が届かないところもありますが、国自体、先に述べたような特定の団体に任せるという考え方を取り入れようという動きもあります。大橋川の改修で河川敷の整備活用を考えなければいけませんが、松江市が率先してこうした考え方を取り入れてみたらどうでしょうか。

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