第20回 宿泊税の導入

2024.02.21コラム

 このところ温かい日が訪れるようになりました。なかなか続くことはまだですが、三寒四温を繰り返しながら進んでいくのでしょう。今年は桜の開花も早そうです。

 先日、新聞で、松江市が宿泊税の実施に踏み切ったとの記事を拝見しました。宿泊税は私の市長時代からの懸案事項でしたので、実施を表明されるに至った市長以下市当局のご努力に敬意と感謝をささげます。

 宿泊税は宿泊関係者の理解が得られず、実施に踏み切れませんでした。その理由は、宿泊税は宿泊料金に上乗せされるため、宿泊税をとらない市町村との間に格差が生じ、宿泊者が減ってしまうということでした。しかしながら、それは表面的な理由に過ぎず、本音は、宿泊税を導入すれば今よりもお客が増えるのかどうか、どうせ収入は行政が他の部門に使ってしまうのではないかという懸念です。宿泊税を使って観光振興を図ることによってお客が増えれば、宿泊収入も増える、それは同時に、宿泊税も増えることになり、それをまた観光振興に向ける、宿泊客が増える・・・という好循環が生まれれば、いうことなしなのですが、そううまくはいかないのでは、むしろお客が減ってしまうのではないかという心配なのです。

 したがって、ポイントは宿泊税を何に使うか、宿泊客を増やす決め手になる使い道があるのか、あるとすればそれは何かということです。しかし、100%確実に増やす方法があるわけではありません。あれば、他の都市でも実施しているはずです。

 観光行政の目的はいかにして観光客を増やすかということですが、これまでの観光行政は新たな観光イベントや観光施設を作ることに精力が費やされ、最近の松江市を訪れる観光客の分析がおろそかになっていたのではないかと思います。つまり、観光客のニーズと松江市の観光資源をいかにマッチングさせるかということができていなかったように思います。

 一方、宿泊業者は観光客を増やすことは行政の仕事と考え、自分の宿泊施設のお客を増やすこと、あるいは、せいぜい自分が所属する温泉地などの観光地のお客を増やすことに精力を費やしてきました。

 しかし、観光客は松江市の魅力を勉強し、訪れ、宿泊するわけですので、行政任せにしないで、宿泊業者も一緒になって、観光客を増やす方法を考えることが大事ではないかと思います。

 そのために考え出されたものが、観光協会という組織です。ところが、組織の実態は、お金も人も行政が丸抱えなのです。観光協会の仕組みは頭脳としての理事会とそれを支える事務局から成り立っています。理事は観光関係者の代表者と行政の代表者数名、事務局は行政からの出向者から成り立っており、予算は行政からの助成金がほとんど、毎年度の施策は事務局が作り、理事会はそれを追認するのが実態です。事務局へは観光情報はなかなか入らず、ましてや、情報分析、企画立案などは難しいのが実情です。

 観光協会を行政から独立させる、すなわち、人も金も独立させる、そのための資金が宿泊税なのです。したがって、行政に判断の余地を与えず、宿泊税の一定割合を行政から協会に支出することが肝要なのです。

 そのためには、行政と観光協会との役割分担、責任分担を明確にすることが必要です。例えば、行政は、5年間の観光振興方針を立てる、イメージは、細かく決めるのではなく、大きな柱をたてることとし、協会は、それを受けて各柱の肉付け、すなわち、実施計画を毎年度宿泊税の範囲内で作る。協会は情報を収集分析し、実施計画を作るために活用するとともに、協会の会員に配る。

 また、協会の事務局を強化するため、人材育成を行う必要があります。そのためには、外部から専門家を招聘し、事務局の運営と職員の育成をしてもらうといったようなことも出てくるでしょう。そのための人件費も宿泊税で賄うことは当然のことです。

 先にも述べたように、宿泊税が有効に活用され、観光客が増えれば、観光都市松江の評価も上がり、それがまた、観光客の一層の増をもたらすものと確信しています。宿泊業者の中には、何も田舎の松江が全国的にまだ取り組みが進んでいない宿泊税を進んで導入する必要はないのではということをいう人もいます。そうではないのです。先進的な取り組みだからこそ、観光都市松江の決断と取り組みを全国が注目しているのです。もっと、松江市に誇りと自信を持ちましょう。

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