第26回 2024パリオリンピック
盆が終わりました。気が付くと、気温も30度前半となり、ツクツクボウシの声が一段と大きく響くようになり、何となく秋の気配を感じるような時期になりました。
夏の甲子園は、大社高校の活躍で盛り上がっています。パリオリンピックでもそうですが、本番で普段の力を発揮できるということは素晴らしいことです。これまでの地元勢は勝利できず、歯がゆい思いをしましたが、今回の大社高校はそのようなことはなく実力をいかんなく発揮しています。監督をはじめ関係者の日ごろの指導方法を知りたいものです。
2024パリオリンピックは私たちに大きな感動を与えてくれました。3年前の東京オリンピックの影が薄くなってしまうような気がしました。なぜでしょうか。両方のオリンピックに共通するのは、環境に配慮し、経費をできる限りかけないことでしたが、異なるのは、日本ではこれを実現するために、メインスタジアムはできるだけ経費をかけないものにする、既存の施設を活用するといった、いわば、それ自体を目的にした直線的な考え方であったのに対し、フランスではこれを実現するために、歴史遺産、文化遺産を活用することによって費用の削減を図るものでした。この結果、東京オリンピックはあまり特徴を感じさせないものとなったのに対し、パリオリンピックはパリの歴史・文化を十分に生かした、世界中の人に感動を与えるものとなったのだと思います。日本には、フランスに負けない、いや、それ以上の歴史や文化遺産があるのに、既存施設にこだわったのか、今となっては悔やまれます。スポーツはスポーツ施設でという発想から抜け出せなかったということでしょうか。
松江城が国宝になる前、「城攻め」というイベントを計画したことがありました。仮設の大手門を作り、全国からお城ファンを募集し、手作りの鎧を着てもらい、攻め手と守り手に別れ、門の攻防を尽くしてもらうものです。しかし実施する時点では国宝に指定されていましたので、実施できるか心配していましたが、文化庁からは、むしろ、文化財を活用してほしいという考えでした。おかげで、国宝を祝うイベントとなって、大変盛り上がりました。その後、このイベントは日本イベント産業振興協会(JACE)の最優秀賞を受けましたが、これは国宝を活用するという発想が素晴らしいと外国人の審査委員が強く推してくれたことがあったからです。日本人も発想を変えて、文化財は、単に眺めるだけではなく、現在を生きる私たちが活用して楽しみ、次世代につなぐことが大事ではないかと思います。
パリオリンピックで感動したもう一つのことがあります。それは、開会式の最後に登場し、「愛の賛歌」をうたったセリーヌ・ディオンの歌声でした。声量があり、堂々として、力強く、揺らぎのない歌を聞いた時、思わず、心が震えました。感動しました。なぜか、涙が出て仕方がありませんでした。名前は知っていましたが、あまり興味はありませんでした。しかし、あの声を聴いて、なんてすばらしい歌手なのかと再認識しました。人の心を揺さぶることが芸術の力だとすれば、彼女は間違いなく、歌で人の気持ちをゆさぶることができる芸術家だと思います。アジアの歌姫と言われたテレサ・テンの声も人の心に訴えかけるものがありましたが、セリーヌ・ディオンの声もそれに負けず劣らず、迫ってくるものがありました。開会式が、エッフェル塔で歌う彼女の歌が終わると同時にフィナーレという演出も上品で素晴らしいものでした。