第5回 縦軸と横軸
先日は久しぶりの雨となり、畑も生きかえったようです。エンドウマメとタマネギの苗を植え、これで今年の農作物の植え付けは終わりました。今後の農作業としてはショウガ、サトイモ、ダイコン、カブの収穫作業が残っています。
縦軸と横軸。私たちは地球という空間(横軸)に存在しています。一方、時間軸(縦軸)の先端を常に生きています。時間軸は単に時間が経過するだけではなく、過去の出来事が刻一刻積み重なってできています。横軸はある時点におけるあらゆるモノとモノ(人と人、情報と情報など)の交錯する場です。そうした縦軸と横軸が交差する点(地点と時点)に私たちは存在しています。要するに、あらゆる出来事は必ず過去からの蓄積(歴史)の上に成り立っているということができ、歴史を踏まえれば物事の成り立ちを捕まえることができる、逆に、物事を探求するためにはそのよって立つ歴史を踏まえなければいけないということがいえると思います。市長時代、私はこうした考え方を歴史的な思考方法と呼び、職員にそうした思考方法を身につけるようにお願いしてきました。
例えば、リサイクル運動。「リサイクルをすることにより再資源化、省資源化がはかられ、地球温暖化対策、気候変動対策に貢献できます。従って、リサイクルをしましょう。」といくら呼びかけても、話が自分とかけ離れており、自分の問題と思ってもらえません。そこで私は、「松江は江戸時代、完璧なリサイクル都市でした。先人にできたことが現代の我々にできないことはありません。リサイクルによりゴミの減量化を推進しましょう。減量化することで節約できた処分費用を目に見える形(貯金)で公表し、市民に還元します。」といったことを訴え、リサイクル運動を展開しました。
高齢者割引制度。施設やサービスの使用料や利用料など広範囲に高齢者割引制度が展開されてきました。その目的はいろいろありますが、高齢者は低所得者が多いのでこれを補完するためとか、外出する機会を増やし介護予防の効果を上げるためなどの目的があげられます。しかしながら、高齢者=低所得者と決めつけることはできない時代となっています。また、低所得者対策ということであれば今は市民の所得把握は十分可能ですし、低所得者は高齢者に限りません。むしろ現役世代より高齢者の方に可処分所得の高い人が多いのではないでしょうか。介護予防対策として果たして効果を発揮しているのか、効果測定は難しいのではないでしょうか。むしろ、なごやか寄り合い事業などに振り向けた方がいいのではないでしょうか。このように制度の当初の目的に立ち返ることによりその存廃を判断することが可能となります。
歴史は現状を判断するための有力な手段となります。歴史は中学や高校の授業では事件や年代の暗記科目と考えられがちです。しかし、歴史は人間の営みであり、連綿と現在までつながっているのです。例えば、日本と中国あるいは朝鮮半島との関係は古代からどのような変遷をたどって現在とつながっているのかといったことをテーマの一つとして歴史を学ぶことにより歴史に興味を持ち、歴史的な思考方法を身につけることができるのではないでしょうか。
皆さん、これからは過去に遡って考える習慣を身につけましょう。