第24回 合計特殊出生率1.20

2024.06.19コラム

 6月半ばを過ぎても梅雨入りとならず、野菜への水やりが忙しい毎日です。ジャガイモ、玉ねぎが予想以上によくできました。スイカ、ウリ、カボチャ、キュウリ、トマト、ピーマンなどの夏野菜も順調です。梅雨を無事乗り切ってほしいです。

 「課長、母性という言葉を知っていますか。」40年ほど前、私が福岡県人事課長の時、職員組合婦人部との交渉での部長の発言です。「女性が持つ子供を産むという能力を母性といいます。人事評価や配置において、そのことが適切に配慮されないと、女性職員を退職に追いやることになります。」部長が言うには、男性職員と同様の労務提供を期待するのではなく、母性を前提とした労務提供を考慮すべきだということです。当時は、「私作る人、僕食べる人」、「亭主元気で留守がいい」といった男女の役割分担を前提としたCMが流行った時期で、女性は家庭を守るという考え方が一般的でした。私もその当時は、女性が働くことは否定しないが、その場合、子供を産み育てることは個人の問題として解決すべきで、職場に持ち込むことはどうかという考え方に近いものでした。男女の区別なく仕事に対する能力を評価することが男女平等の考え方に合致する。そこに、母性といったものを配慮するべきではない。あくまでも、職場への貢献度で判断すべきだということです。そうしないと、男性職員がやる気を失ってしまう。母性と仕事は両立しないのではないかなどと考えていました。

 2023年の合計特殊出生率が発表され、1.20と過去最低となりました。私が、京都府の総務部長をしていた1990年の出生率は1.53と、1966年丙午の年の1.58を下回る結果となり、1.53ショックといわれましたが、このままでいけば、ほどなく1.0を下回ることになり、これでは、日本という国が消滅してしまいかねません。国を挙げて、国民を挙げてこの問題に対処する必要があります。

 出生率の低下は母性が制約されているということです。安心して子供を産み育てる環境が失われつつあるということです。仕事と家庭との両面から制約要因を考えることができると思います。仕事面では子供を産み育てることによる職場離脱をどう考えるかです。一般的には職場離脱期間があることで、同期の職員とはそこで差が生じる傾向にありますが、むしろ積極的にプラス要因ととらえられないでしょうか。母性が障害となってしまうとどうしても出産を控えてしまうことになります。出産育児の経験が職場にとってプラスになることを考えてみることです。離脱期間中でも、職場の状況を知ることができる環境を作るのはもちろんですが、出産育児を通して職場の仕事を研究し、新たな提案をすることで、スムーズに職場復帰できるといったことは考えられないでしょうか。

 家庭においては核家族化、東京一極集中が進み、出産や育児の孤立化が深まっています。以前であれば、大家族のもとでの出産や育児を経験した親の助けを仰ぐことができたのですが、そうした経験を持たない親が徐々に増え、安心して出産や育児を行う環境がなくなっていきました。したがって、これからは社会全体で支えていくことが大事ですが、肝心なことは、決して強要したり、追い詰めたりしないことです。むしろ、自発的に、楽しく出産や育児を経験することだと思います。補助金を出すのではなく、出産やある程度までの育児は無償にすることです。また、その際、国はどういう考え方で無償にしているのかを分かりやすく全体設計を示すことが大事だと考えます。国として、次の時代を担う人材に期待しているということが分かるような語り掛けをお願いしたいと思います。

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